本シリーズでは、持続化補助金(一般型)の書き方について、実際に書いて見ようと思う事業者様に向けてわかりやすく解説しております。今回は第二回目として、持続化補助金申請書の主要パートの一つである経営計画書の書き方について解説していきます。第一回を見逃した方、そもそも持続化補助金って何?という方は以下リンクの記事をお読みいただけますと幸いです。

【参考】持続化補助金申請書(一般型)の書き方〜概要編〜
https://crossroute.co.jp/jizokuka-ippann-2021-11-28/

経営計画の全体像

経営計画の項目については、第一回で簡単に解説しておりますが、改めて取り上げさせていただきます。中小企業支援サイトのミラサポPlusに全体像が記載されておりますので、以下に示します。

「経営計画」の項目

1.企業概要

概要・沿革設立年、基本理念、代表の経歴、後継者がいればその方の経歴について記載します。
基本情報営業時間、人員体制、店舗立地などについて記載します。
商品構成
利益構成
売上、商品(サービス)について記載します。
商工会議所の様式記載例では、売上総額の大きい商品と利益総額の大きい商品を図表にしています。

2.顧客ニーズと市場の動向

顧客ニーズ顧客(消費者・取引先)が求めている商品・サービスは何かを記載します。
市場の動向競合他社の存在や顧客の増減など、これからの市場環境の見通しを記載します。一般的な市場調査のデータについては、地域経済分析システム(RESAS) を利用すると便利です。

3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み

自社の強み商品・サービスが他社に比べて優れている点を記載します
顧客の評価顧客に評価されている点を記載します。
お客様の声、お客様アンケートの結果、新聞や雑誌記事で取り上げられたことなどがあれば記載します。

4.経営方針・目標と今後のプラン

経営方針上記の1~3を踏まえた、これからの経営方針を記載します。
顧客の評価「〇年までに来店客数〇%増、客単価○○円」のような数字の目標を記載します。
お客様から取引先から「こういう会社だと思われたい」のような目標を記載します。

出典:https://mirasapo-plus.go.jp/hint/6666/

これらの項目について、どのように記載するかで採択率が変わってきます。様式を見ていただくとわかりますが、それぞれの項目について、記載枠が設けられているだけであり、このように書くと正解というのはありません。ポイントとしては、必要な事項を簡潔にわかりやすく書くということになります。

経営計画を書く前に

よくある間違いとして、いきなり申請書を書き始めるというものがあります。慣れている方だと問題ないかもしれませんが、特に初めて申請する方については、書き始める前に、しっかりと計画の内容について練り上げた方が良いです。そうは言っても、何から始めれば良いか分からない人もいらっしゃるかと思いますので、ポイントを解説したいと思います。

(1) 外部環境分析

まずは、外部環境分析から始めることをお勧めします。なお、この外部環境分析の内容は、経営計画の二つ目の項目(顧客ニーズと市場の動向)に深く関連します。いわゆる経営学の教科書にあるようなフレームワーク(PEST分析、5Force分析など)による分析が必ず必要という訳ではありませんが、フレームワークは便利でわかりやすいため、拠り所がない方にとってはお勧めです。市場の動向については、業界紙や業種別審査辞典、または経済産業省のホームページなど様々な所から入手できますので、マクロの視点からはそれらを利用すると良いでしょう。まずはこれらの情報を集めた上で、紙にまとめて見ましょう。必要であれば、エクセルなどを用いて表やグラフを作ってみるとさらに分かりやすくなります。様式に落とし込む際に整形するので、まずは綺麗に作ることを意識せず、頭の整理という意味でまとめてみましょう。

(2) 内部環境分析

次に内部環境分析ですが、これは自社内部の話になりますので、自社の経営資源や自社の強み、競合他社との差別化要素などを棚卸ししていくようなイメージになります。この内容は、経営計画の三つ目の項目(自社や自社の提供する商品・サービスの強み)と関連します。一番重要なのが、自社の強みを明確化することです。一口に強みと言っても、単純化するのは難しく、複数の要素が組み合わさって強みを生み出していることも考えられます(例えば、老舗料理屋だとしたら、料理の味付け・クオリティだけでなく、長年の地元顧客との接点なども強みと考えることもできますよね)。なぜ自社の商品が選ばれているのか、どうしてリピーターが多いのかなど、様々な視点から自社の強みを明らかにしましょう。

(3) 自社経営方針の立案(上記の掛け合わせ)

外部環境分析及び内部環境分析が終わったら、ある程度自社を取り巻く環境が見えてきているはずです。例えば、自社がラーメン屋だとして、至近で売り上げが落ちてきているとしたら、影響は外部環境にあるのか(例えば、近くに有名ラーメン店ができた)、内部環境にあるのか(自社商品のラインナップが常に固定で飽きられている)、はたまた両方なのかなど見えてきていると思います。自社が繁盛している際も然りで、それは何故なのかが見えてくるでしょう。ここでは、それらを踏まえて、自社としてどのような戦略を打っていくのか、大まかな方向性をどうするのかなどを決めていきます。基本的には自社の強みを顧客のニーズに当てていき、かつ他者と差別化を図ることです。これは中小企業の経営戦略としては基本なので覚えておくようにしてください。

(4) 具体的施策の検討

最後に(3)で作成した方針に従って、具体策の検討を行います。「何する、何故する、どうする、どうやる」を具体化していきましょう。例えば、ある一角の団地の顧客の声によると、○○な商品をデリバリーして欲しいという要望があったために、その団地にデリバリーのラインナップを記載したチラシを配布したい、そのため持続化補助金が必要である、みたいなストーリーができると、審査する側としても納得感がありますよね。できるだけ具体的に、かつロジカルに分かりやすくまとめることが大切です。

企業概要の書き方のポイント

企業概要には会社の基本情報や沿革、商品構成などを記載します。あなたの会社を何も知らない人に「何をやっている会社なのか」を端的に伝えることを意識します。ここでポイントとなるのが、要所要所で具体的なファクトを入れ込むということです。どうしても事業内容・沿革などは抽象的になりがちなので、具体的な数字や年月、事実を盛り込むことで、内容に厚みを持たせることができます。曖昧な内容よりも具体的事実があったほうが加点されやすいです。

ここで具体例を2つほど示します。どちらの例が良いか考えてみてください。(例は全て仮想のものです)

例1【事業概要・沿革】
 当店は○○町に店を構える洋菓子店である。約15年前に地域に愛される洋菓子店を目指して創業された。創業以来、順調に売り上げを伸ばしてきており、主な客層としては地元のリピーターが多い。

例2【事業概要・沿革】
 当店は県南〇〇町に店舗を構える洋菓子店▲▲である。店主は専門学校卒業後、仙台市内の洋菓子店に勤務していたが、結婚から3年後の平成18年、実家のある○○町に店舗兼住居を建てて個人事業として独立開業した。店主の妻は独身時代和菓子店に勤務していた経験があり、簡単な和菓子製造や菓子店の店舗運営に関する知識があり、これを契機に和菓子との融合をコンセプトにした洋菓子店となっている。看板商品は抹茶ロールケーキである。

どちらの例が良いかは一目瞭然ですね。答えは例2になります。
例1について、例2と比べると明らかに具体的ファクトが足りていません。例2には店主の具体的な沿革やこの店舗の差別化要素(和菓子との融合)などのほか、看板商品などの記載もあり、読み手はこの会社がどのような会社なのかイメージしやすいかと思います。ここは非常に重要なポイントとなりますので、必ず押さえるようにしましょう。